schauen
小関央翔
Koseki Hiroto
屋代研究室
インスタレーションその他
光で象る
本作品のタイトルはレントゲンやCTの写真を見る道具である「シャウカステン」の、ドイツ語で特定の対象や方向を意識的に見るという意味を持つ「シャウ」から引用しています。時代と共に診察室から徐々に姿を消しているシャウカステンではありますがご存じの方もいるでしょう。
写真作品を見るとは一体どのようなことなのでしょうか。紙媒体に印刷されているような一般的な写真作品の形態では鑑賞者と写真の画の間に越えられない境界が存在し、鑑賞者は反射光で像を認識しています。作者の心象を写真で描くにあたって、作者の意図や表現をよりダイレクトに伝えるためには透過光を用いることで画の、境界の向こう側の世界や作者自身の内側、内面を透かして顕にできるのではないか、そして認識できるのではないかという仮説のもと制作しました。展示は壁面に対し平行に設置された板状の光源に写真を配置しています。医師がレントゲンやCTの写真とシャウカステンを通して普段は見えない内側を見るように、作者の身近なものの一部と向き合い被写体とした像を光で透過させることで内側や内面といった普段は見えず様々なものが混じった抽象的なものに形を与え、像として結び見えるものとしました。
PS:本作品のタイトル「schauen」のドイツ語での正確な発音としては「シャウ」ではなく「シャオエン」です。
根本的なところの構想はかなり前から定まっていましたが、その後どのような形に発展させていくのかということやその方向性が長期間揺らぎ続け途中で変わったことがいくつかありました。正直、そもそも形にすることができるのか不安でしたが、写真表現の一つの形を探求することができ、またそのことを嬉しく思います。屋代教授をはじめ、制作及び展示に協力して頂いた方々には感謝申し上げます。